地域の企業との取り組みレポート:part2
client:株式会社すがの印刷様
看板や外観デザインにとどまらず、地域のモノづくり企業や病院、学校といった公共施設まで。まるで一部署のように頼られる存在――看板デザイン相談所富山店。この街で積み重ねてきた仕事は、単なる看板づくりを超え、「人の想いを形にすること」。その歩みを、看板デザイン相談所本店代表・斉藤が聞き役となり、インタビュー形式でお届けします。

すがの印刷さんとの出会い
本店 斉藤- 今回はどんな企業さんとのお仕事を紹介していただけますか?
富山店 村瀬- 富山県黒部市にある「すがの印刷」さんです。なんと102年の歴史を持つ、地域に根ざした印刷・企画会社さんなんですよ。
本店 斉藤- 102年!すごい。黒部ではもう顔みたいな存在ですね。
富山店 村瀬- そうなんです。パンフレットやチラシ、記念誌の印刷はもちろん、POPやのぼり、販促グッズ、Web、動画制作まで幅広く手がけておられます。最新設備とスピード対応で、地元企業や学校、イベントの情報発信を長年支えてこられた、頼もしい会社さんです。
どんな取り組みを一緒に?
本店 斉藤- 具体的にはどんなお仕事をご一緒されているんですか?
富山店 村瀬- ここ2〜3年は特に、店舗関係のサインや空間演出など、クリエイティブ分野への取り組みが増えていて、パートナーとしてお声がけいただくことが多いですね。
案件ごとに役割はさまざまで、看板製作や施工などの技術面だけを担当することもあれば、すがの印刷さんのディレクションのもと、お客様と直接やりとりしてデザインやブランディングの企画から一緒に関わることもあります。
本店 斉藤- なるほど、得意分野を掛け合わせて、お客さまを一緒にサポートしている感じですね。
富山店 村瀬- まさにそうです。案件によっては一緒に“チーム”になって動いている感覚ですね。
アクアフェアリーズの駅ジャック
富山店 村瀬- 最近のものですと、地元バレーボールチーム「アクアフェアリーズ」の案件です。新幹線の黒部駅の柱まわりに大型ビジュアルを半年間掲出しました。
本店 斉藤- 駅の柱全部ですか?それはインパクトありますね。
富山店 村瀬- はい、ホームに降りると選手の写真がずらっと並んでいて、試合シーズン中は本当に迫力がありました。期間限定広告なので、素材選びから貼り方、剥がし方まで慎重に設計。終了後も跡が残らないように、接着強度を計算してます。
本店 斉藤- そこまで考えるんですね。まさにプロの仕事。
富山店 村瀬- ありがとうございます。駅を利用する人が立ち止まって写真を撮ってくれるのを見ると、やってよかったなと思いますね。
車屋さんのブランディング

本店 斉藤- ブランディングから入った案件はどのようなものがありますか?
富山店 村瀬- 車屋さんのご相談をいただきました。大切にしたのは「入りやすさ」と「車のことなら何でも相談できる」という安心感をしっかり店舗の外観で伝えることです。そこで、まず親しみやすい雰囲気を出すために、車をモチーフにしたキャラクターを一から考えてご提案しました。お客様に「どなたでも大歓迎」と感じていただけるような言葉を添えつつ、「車のいろいろ」というフレーズで、幅広いサービスに対応できることも打ち出しました。
最終的なデザインは、お客様のご希望に合わせながら調整を重ねて決定しました。インパクトのあるサインの形状には、弊社の強みであるルーターカットの技術を活かしています。結果として、目に留まりやすく、なおかつ安心して入りやすい雰囲気を持つ看板が完成しました。


什器やサイネージの製作

富山店 村瀬- うちは「什器」系の案件もかなり多いんです。黒部駅のサイネージ什器もそのひとつ。
もともとデジタルサイネージだけが置いてあったんですが、「もっと見やすくしたい」「パンフレットも置けるようにしたい」という要望をいただいて、周囲のカバーとパンフレットラックをオリジナルで製作しました。


本店 斉藤- オリジナルで作れるのは強い。
富山店 村瀬- ありがとうございます。什器に関しては弊社は専門性が高い分野なんです。NCルーターで正確に切削したり、自動カンナで面をツルッと仕上げたり、家具製作の機械もそろっています。
本店 斉藤- 工場の中、ちょっとワクワクしますね。
富山店 村瀬- 来てもらうと面白いですよ。パネルソーが「シャーッ」と音を立てて大きな板を切る、レーザー加工機が赤い光でスッと文字を抜いていく、曲げ加工機で鉄板がぐっと曲がる。
木の香りと塗装ブースの独特の匂いが混ざる工房で、少人数のスタッフが一つひとつ確かめながら仕上げていく。大量生産ではなく、一点モノを精度高く作り込んでいく現場です。
本店 斉藤- なるほど、そこで全部作れるんですね。
富山店 村瀬- はい。木も鉄も扱えるので、家具サイズの什器からサイネージのカバー、細かい部品まで全部自社で作れます。角度や寸法もミリ単位で合わせられるし、仕上がりに妥協がないんです。



看板屋から“総合ものづくり工房”へ
本店 斉藤- 看板屋さんのイメージが変わりますね。
富山店 村瀬- そうですね。もともとは看板製作から始めましたが、すがの印刷さんのような素敵な地域企業さんたちと一緒に取り組む中で、「総合的なものづくりの相談所」みたいになってきています。
工場にはレーザー加工機、パネルソー、溶接機、塗装ブースがそろっていて、NC加工から塗装までワンストップで対応できます。少人数だからこそ細かい部分まで目が届くし、納得いくまでこだわり抜ける。外注に出さず自分たちで作ることで、クオリティと納期をコントロールできるのが強みです。




除幕式の布づくり

富山店 村瀬- 面白い案件だと、大きなタイのオブジェの除幕式用の布を作ったことがあります。
本店 斉藤- ああ、式典でロープを引いたらパサッと落ちるやつですね。
富山店 村瀬- そうそう。それをどう作るか、どうやって落とすかを一から考えました。布の素材選び、縫製、固定方法、落とすタイミングまで、工房で何度もテストを繰り返しました。
最初の試作は軽すぎて、ちょっと引いただけでバサッと落ちてしまったり、逆に引いても動かなくて「これはダメだな」って二人で笑ったり。。。
フックの形を変えたり、ロープの通し方を変えたりしながら、何度も吊るしては落として……工房の床が布だらけになったこともありました(笑)。お客様が求めていたのは、ただ隠しておく布ではなく、“式典の一番いい瞬間に、パサッと気持ちよく落ちる”ことですから。
本店 斉藤- その「パサッ」のためだけに、そこまでやるんですか?
富山店 村瀬- そうなんです(笑)。でも、その一瞬のためにやる価値があるんです。
本番でタイが現れた瞬間、会場からわーっと拍手が起きて。「あぁ、やっとこの瞬間をつくれた!」と心から思いましたね。

ものづくりへの想い
本店 斉藤- 技術の話になると熱が入りますね(笑)。
富山店 村瀬- 作ることは本当に好きなんです。でもただ好きなだけじゃなく、精度の追求やクオリティ管理は徹底しています。
他の会社が「難しい」と言うものを、図面を引き直したり、治具を作ったりして実現する。だから「どこに頼めばいいかわからない仕事」が集まってくるんでしょうね。
納得できないクオリティのものは自分で調べて試作して、最後はきっちり形にする。そういうプロセスそのものが、自分の生きがいですね。
編集後記
本店 斉藤- 今日のお話を聞いて、富山店がただの看板屋ではなく、地域の企業と一緒に“ものづくり”をしている工房なんだと改めて感じました。
「困ったらまず相談したい」と思われる存在になっているのも納得です。これからも富山の街に寄り添う看板デザイン相談所として、たくさんの景色を作っていってくださいね。